昨年10月に、千葉市動物公園に全園児で行きました。子ども達は、前日からワクワクしていた様で、4時に起床した子もいました。朝が早かったせいか、出発と同時に「お腹すいたー」と言い出しました。1時間もすると、今度は「動物園まだ?」の連発。「動物園にいる園長先生のお友達も、待っていてくれるから、もう少し待って」とお願いしました。動物園に着くと、沢山の幼稚園児と小学生で、賑わっていました。コロナのせいか、保護者同伴はいませんでした。象さんから順に見て回りました。
おやつの時間になると、おやつを食べろと、追い回されました。おやつは苦手です。一段落すると、今度は、暴れん坊グループが、戦いを挑んできました。防戦し、捕まえては投げ、振り回すが、疲れて、カンベンしてくれと逃げると、「エンチョーゴリラ、待てー」と追いかけてきます。面白そうに見ていた上品な制服の他の園の子まで「エンチョーゴリラ待てー」と参戦してきました。その子たちの園長先生が「若い園長さんは、元気でいいですね」と言いました。多分、私より若いと思い、何も言えませんでした。
昼食後「園長先生のお友達に会いにいくぞ!」とゴリラ舎に向かいました。彼等が、千葉市動物公園にやって来た頃からの付き合いです。当時は、2頭で取っ組み合って、楽しく遊んでいました。青壮年期になると、私が「ングー」と鼻を鳴らし、挨拶すると、草を投げたり、ドラミングをして威嚇をしてきました。近頃は老いて、毛の艶もなくなり、すっかりおとなしくなってしまいました。声を掛けても、チラッと一瞥するだけで、静かに座って考え込んでいます。寂しいかぎりです。隣のチンパンジーは、世代交代して元気です。私が「ホッホー」と声をかけると、高いところで寝ていたリーダーが、サッと立ち上がり「ホッホー」と答えました。私が大きく手を振ると、彼も大きく手を振りました。周りにいた先生と子ども達が、エッ?という顔をして、私と彼とを交互にながめて、「知ってるの?」と、言いました。私がこちら側のリーダーと思っているのか、いつも私をめがけてフンや土や草を投げてきます。私は慣れているので、「来るな!」と言う時に、サッと除けることができますが、近くの子ども達が、犠牲になります
その後、バスの中からずっと「ライオン、ライオン」と言っていた子ども達が、急かせるので、ライオン舎に急行しました。近くに来ると、ライオンの咆哮が聞こえてきました。外に出て、ガラス一枚で迫力満点です。すると、あれほど「ライオン、ライオン」とうるさかった子が、急に顔を強張らせ、私のお尻にしがみついてライオンに見向きもせず、今度は早く次に行こうとせかせました。
帰園後の職員室は、私と子どもと動物の話で大盛り上がりだったそうです。あるお母さんが「子どもが動物園で、園長先生のお友達に会ってきたと言っていましたが、園長先生は動物園にも、お知り合いがいらっしゃるんですねー」と言いました。私は、またまた何も言えませんでした。そうです。私は彼等のお知り合いなのです。だから、彼等に会えるのは楽しいのですが、囲いの中にいる彼等と、自由なジャングルを思うと、寂しく、悲しくなるのです。
コロナ禍の中で、暗く窮屈な日々が続いているので、今月は、子ども達との笑い溢れる、明るい便りにしました。