子どもの嘘と大人の嘘

(2021.03.01)

近頃は、真実をフェイクと言い続け、嘘を本当のことのように思わせる世の中になっている。民主主義の根幹である選挙も、自分が負けると、不正があったと言い続け、それが通らないと暴力に訴える。トランプも、ミャンマーの軍部も同じだ。日本の国会でも、嘘とゴマカシを繰り返し、不正をウヤムヤにして、いつの間にやら逃げとおし、社会を惑わせ、政治不信を引き起こす。国を傷つけ、混乱させる。危険である。

「子ども達は、純粋で嘘がないですよね」と言われる。いやいや、純粋ではあるが、嘘(?)はよくつく。しかし、人を傷つけたりはしない。害はない。むしろ楽しく、面白い。
「僕のお父さんは白バイのおまわりさんなんだ。」と言っていたA君が一ケ月もしない内に「僕のお父さんは消防車を運転しているよ。」と言う。「君のお父さんは、白バイのおまわりさんじゃないの?」と問うと、「消防署の人だよー」と平然としている。たしか、お父さんは白バイのおまわりさんと言っていた筈だと思いつつ、私も少しボケてきたかなーと心配になり、担任に「A君のお父さんは何している人なの?」と尋ねると「会社員ですよ」とのことだった。子どもは、その折々で、夢想したことを言ってしまうようだ。

どこかに子ども達を連れていくと、決まって話が大きくなる。たつのこ山に行った時、B君が「僕、ここに3回来たことがあるよ。」と言うと、「僕は10回も来た。」「僕なんか100回も」「僕は3万回も来た」と段々エスカレートしていく。たつのこ山からは、周囲が一望できる。遠くに筑波山が、近くに牛久大仏が見える。C君が「あっ、大バツだ」と指さし「お父さん、お母さんと大バツの上に登ったんだ」と自慢気に言った。D君が「この間、あの大バツ、歩いてたよ」と言うと、他の子たちも「僕も歩いているところを見たことある」と、とんでもないことを言い出した。

よくよく考えてみると、私も随分子ども達をだましている。クリスマスのサンタにしろ、豆まきの鬼にしろ、本物に近づけてやっている。サンタは、夢を壊さないように、徹底して本物を貫く。鬼は恐怖を引きづらないように、早目に正体を明かす。
夢を現実に置き換え、お話を作り、楽しむことがある。宇宙探検の話は、映画で見た場面を思い出しながら、迫真のお話である。宇宙から見た地球のこと、宇宙遊泳での危険な場面、アメリカの砂漠に帰還するまでを話すと、子ども達は「僕も行ってみたい!」と心を弾ませる。そして、話している自分も、まるで本当に宇宙に行った気分になる。

大人の嘘は害になり、人を傷つけるが、子どもの(嘘?)お話は夢であり、希望である。私ももっと語り上手になって、子どもと一緒に夢の世界を楽しもう。

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