ふたば糞尿譚

(2021.06.01)

 みんなが育てている二十日大根を、Sちゃんが引き抜いてしまった。注意しても、見向きもせず、畑から出るように言っても知らんふり。実力行使して、畑の外に出すと、大暴れで私を蹴ったり、引っかいたりした。七夕の集まりの頃には、おとなしくなって、ニコニコ笑顔で私に寄ってきた。その姿を見て、反省した。二十日大根がどの位育っているか、見たかったので引き抜いてしまった。しかし、抜いてはいけないことを注意され、反省の葛藤の途中で、強制執行されたことがよほど悔しかったのではないか。あんなに、子ども達の主体性を大切にしよう。だから、子ども達が自分で考え、自主的に行動するまで待って、見守っていこうと言っていたのに、待てなかったことを深く反省した。

 昨年の年長児が卒園する前に、幼稚園で何が一番楽しかった?と聞いたところ、思いがけない答えが返ってきた。運動会、遠足と言うと思っていた。なんと、子ども達だけの夏祭りとのことだった。子ども達だけで行った昨年の夏祭りは、子ども達にも、先生達にも、大好評だった。子ども達が主体で、自主的な活動にしようと、考えた。できる限り子ども達が自ら仕事に取組み、実体験の中で、いっぱい失敗することを、しっかり見守ることにした。

 年長児が中心になって、お店の看板作り、ダンボール製のレジスター作り。カキ氷屋、ジュース屋、焼きそば屋、ソーセージ屋・・・各種ゲーム屋、ヨーヨー屋等など、それぞれの店で係分担をした。キッザニアより、立派な子どもだけの夏祭りだ。まずは年少、年中児が400円を握りしめ、お店を回る。保護者の皆様に伝えたい面白い話がいっぱいあるが、お伝えできるのは、ほんの一部。

 今月は少々臭い話で恐縮です。4月、5月の新入園の、3歳児クラスは戦場のようだ。こちらで大泣きしている子がいる。あちらで、おしっこをおもらししている子がいて、その始末をしていると、その間に別の子が「先生、ウンコ」となる。おしっこの始末が終わらぬ間にウンコにかかわっていると、スッポンポンで走り廻って遊び始める。追いかける。これが4月。

 5月、もう泣いている子は一人もいない。自由に楽しく遊んでいる。砂場では、水を運んできて、ドロンコになって、水浸しになって、1日に何度も着替える子もいる。給食になると、更に大変なことになる。明らかに、自分で食べた事がないと思われる子もいる。給食を前にして、途方に暮れている。食べ方をコーチしようとすると、口を大きく開けて、アーンをして待っている。それでも、スプーンを持たせて、自分で食べさせようとやらせるが、うまく食べ物を、スプーンに載せられない。口に運べない。それでも2~3日後にはなんとか食べられるようになるが・・・室内は大変な状況である。あっちではスープをひっくり返しビショ濡れ、ゴハンとおかずを大量にこぼす。着替え、掃除に、先生達は、子ども達の間を走り廻る。そして、食べている最中に決まって大・小をやられる。給食の前にトイレ、チェックをしても、必ずやられる。「園長先生、濡れちゃった」と、A子ちゃんが言うので、スープをこぼしたのかと思って、雑巾を持ってきて、机の下を拭いていると、どうも様子が違う。下半身だけビショビショ。又やられた、と抱き上げてトイレに連れていって、タオルで拭いていると、「園長先生!何してるのよ、早くして、恥ずかしいでしょ」という。下は赤ちゃんだが、口だけは発達して生意気なことを言う。始末を終え、私にお礼を言わせて、部屋に戻ると、B君が、今度は「ウンコ!出そう」と言うので、急いでトイレに連れて行くと、既に吾妻橋のアサヒビールの上に乗っているような立派なのが出ている。

 先生方は、食事の時間は、交代で5分程度しか取れない。理事長としての仕事があるので、午後はなるべく早く事務所に戻りたいのだが、こんな状況を見て帰るわけにいかない。

 それでも、園は楽しい、子ども達はかわいい。朝、園に行くと、子ども達が走り寄ってきて、抱きついてくる。いつも足にしがみついて離れない。「カンベンしてよ、放してよ。」と言うと、「大好きなんだから、しょうがないでしょ」と言う。もう、私は何も言えず、しがみつかれたまま歩くしかない。あと1ケ月もすれば、トイレット・トレーニングも、食事も、失敗を重ねて、しっかりできる子が増える。子ども達の成長は、目を見張るものがある。入園当初から比べれば、大きく成長している。これから、もっと成長する。自分でやらなければ、失敗(体験)しなければ成長しない。

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