筑波登山

(2022.12.01)

コロナで有名になったWHO(世界保健機構)は、「健康とは、単に病気でない、とか虚弱でないとかではなく、身体的・精神的、そして社会的に良好な状況であること」と定義しています。「体」だけでなく「心」も、そして「人との関わり」も健やかでなければなりません。

今ではたくさんの園が筑波登山を取り入れていますが、43年前に、初めて子ども達を連れて筑波山に登った時、山頂近くの茶店の人が「幼稚園児が登って来たのは初めて!」と驚かれました。山に登るのは、上への体重移動なので、身の軽い幼児ほど楽に登れます。手をついて登っていますので、転んでも安全です。しかし、下りは手をつく間隔が遠くなるので危険です。下りは慎重に注意して歩くように声を掛け続けます。子どものことが分かっていたので、筑波登山を始めることができたのです。ハンディのある子も登れます。最後になっても、仲間が待っている、昼食の場所に着くと、みんなが拍手で迎えてくれます。胸を張って誇らしげにゴールします。日頃は体の大きな太った子が威張っていますが、上への体重移動なので、体の小さな軽い子ほど軽々と登れます。反対に、体重の重い子は苦闘し、喘ぎヘロヘロになります。いつもとは逆転して、体の小さい子に「大丈夫?頑張って」などと励まされることになります。体の小さい子が優位になれます。人には、それぞれ長所・短所があることが分かります。何よりみんな仲間として、同じ目標に向かって頑張ることができるのです。

すべての活動で、必ず「ねらい」「目的」を大切にしています。園の理念「たくましく大地に根を張れふたばっ子」の根っ子の教育と、「子どもの楽園」子ども中心、子どもが主人公を原理・原則として、ねらい・目的を引き出します。筑波登山の目的の一つは、苦しくても自分の足で登り切った達成感を味わうことです。競争ではないので、誰もが達成感を味わうことができます。「僕は頑張った、やればできる」と、自尊感情を持ちます。もう一つのねらいは、友達と一緒に励まし合い、登ることです。筑波登山の翌日、「昨日はみんなと楽しかった。明日また、行きたい」とお願いされました。私は、絶句して筋肉痛の足をさすり、返答できませんでした。

初めに、健康とは「体」と「心」と「人との関わり(社会性)」が、健やかなことと述べましたが、ふたばっ子は、健康そのものです。運動会、筑波登山を終え、秋の深まりと共に、日々の園生活も、いよいよ充実し、子ども達は、一回り大きくなり、自信をつけたように感じられます。