お正月が過ぎ、小学校入学を控える頃になると、「うちの子は、まだ、文字が書けない」と、焦りを感じる人が出てきます。文字や数に対する理解は、個人差が大きいために無理もないことだと思います。文字を学ぶのに適当な時期も、個人差があります。6歳か6歳半に達してからでも遅くないと言われています。幼児期には、統一的に学習させるのは、適当でないと思います。小学校に入ってからでも遅くないでしょう。入学時に、自分の名前が読めて、書ける、それだけできれば良いでしょう。
しかし、この時期にふさわしい生活があります。絵本の読み聞かせや、お話をすることで言葉を知ること、イマジネーションを育てることです。(但し、絵本の世界を楽しむだけにして下さい。決して質問したり、文字を無理に覚えさせたりしないでください。)日常生活の中で、必要な記号を覚えるとか、標識を知る、あるいは文字を書けなくとも、おじいちゃん、おばあちゃんに便りを送るということは、文字という抽象的な印を学ぶ前段階として大切なことです。そこから、自分の名前を表す記号として、「やまだたろう」と言うのが自分の名前を表すものだとか、木のプレート表示に何が書いてあるか、といった興味につなげていきたいものです。
また、数を唱えるだけでは、数を理解しているとは限りません。実際に、物をひとつずつ数えながら並べたり、対応させて、数を比べ、どちらが多いか体験するなど、数と量の具体的な場面で、具体的な経験をさせることにより、よりはっきりと理解できるようになります。幼稚園でも、グループの人数を数え、対応させて、数を比べたり、お知らせを配る時に、人数分だけ取って配ったり、日常生活の中で、物や人と対応していくようにしています。
お子様一人ひとり、成長・発達の仕方が違います。文字や数を子供に押しつけず、生活の中で、興味・関心を引き出す工夫はしても、焦らず、ゆっくりと見守ってあげるようにして頂きたいと思います。
そうは言っても、小学校から受験など、私の時代では、考えられない現象がおこっています。そんなに早くから競争させて、子ども達は大丈夫なのかと心配です。しかし、最近は、新しい潮流が少しずつ起きているようです。難関校を出ても、安定した企業などないほど、社会が急激に変化する時代に、求められるのは、偏差値より柔軟な思考力、個性、多様性です。大学、高校も、一般入試より、推薦、総合選抜での合格の方が多くなっています。学習内容も、暗記、計算より「探求学習」に比重が大きくなっています。自由に、伸び伸びと生活する中で、自分で考え、決断し、自分で行動し、体験する事が大切です。