「根拠なき自信ープラス思考」

(2025.10.1)

 県の監査があった。本当にしつこく、細かい監査だった。本園は真冬でもお部屋は開けっぱなしである。それなのに、換気の検査がどうのと・・・ウンザリしていると、窓のガラス越しに子ども達が私が外に出てくるのをじっと見つめて待っていた。目が合うと、時折、「マダー」「遊ぼうヨ」と呼び掛ける。私が、「まだ、あっちに行ってて」と言う。・・・を繰り返した。すると、監査人も困った様子で「理事長先生、園長先生がいれば結構ですよ。」と私を開放してくれた。子ども達が私を囲んで「あの人達、早く帰ればよかったのに」「遊ぼう!」と喜んでくれた。子ども達の声は監査人にも届いていたと思う。監査人が帰った午後、R子園長に、「細かくてしつこかったな」というと、R子園長は「細かく見てもらえて、かえって書類が整理できて良かったです。」と答えた。うんざりする私とは反対に、プラスにとらえていた。反省しきり。

 昨年の筑波登山の日、筑波山に近づくにつれ、山頂付近には厚い雲がかかっているのがはっきり見え始めた。普通、大人は「残念、今日はついてない」とガッカリする。実際に、筑波から帰ったその日「こんな日によく行ったわねー。私だったら絶対行かない。」と言われた。しかし、子ども達は、雲がかかった山頂を見上げて「やったー。雲がかかっている。早く登って雲を食べよう。」「ビニール袋に詰めておみやげにしよう」と意気おい込んだ。頂上付近に近づくと濃霧の中にたたずみ、「アレ、雲がない。どうしたんだろう」と雲を探した。「遠くから見ると雲なんだが、この雨のような濃い霧が雲なんだよ。」「へー、この霧のモヤモヤが雲なんだ。お腹の中に思い切り吸い込んじゃおう。」と大きく深呼吸した。「雲の中にいるなんて、こんな経験なかなかできないよ。」と思った。お弁当を食べ終える頃に濃霧が小雨になった。「ほら雲が厚くなると雨になるんだ。」とまた経験。急いでお弁当を食べ、ケーブルカーで神社まで降り、お参りをしていると晴間が見えたので、仁王門のところでシートを広げ、残っていたお弁当・おやつの再開。「二回もお弁当、おやつが食べられるなんてラッキー」と喜んでいた。ふたばっ子はみんなプラス思考。

 プラス思考の方が物事を前向きに楽天的、積極的にとらえられるようになる。人生を豊かにする。プラス思考は幼児期に「根拠なき自信」をつけることでできる。3才児は誰もが自分が一番早いと思っている。競争してゴールすると、遅れた子もみんな指を立て「一番!一番」と叫ぶ。これがいいのだ。私は遅れてゴールして「みんな早いね!」と言うと、何度も繰り返し走らされ疲れるが、子どもはどんどんフォームもしっかりして本当に早くなる。そこから「自尊感情」「自己肯定感」が育つ。「僕はできる。私はやれる。」という自己肯定感がないと意欲はわかないし、チャレンジ精神はできない。競わせて、早くから現実を突きつけ負のイメージを植え込んでしまうと、どうせやったってダメ・・・どうせ僕はダメなんだと思うことになる。君はデキル、やればなんとかなるを繰り返すと、失敗したって、いつかは必ずできるようになると前向きに物事をとらえるようになり、積極的になり、プラス思考を持つことになる。まずは、「根拠なき自信」を育てよう。(九月の続きは十一月にします)